読書は、比類のない楽しい飛行です。
皆さんも大好きな本に心をゆだねて、豊かな想像と発見の旅をつづけてください。
                            内海隆一郎「みんな本を読んで大きくなった」より

いま一度白きノートに
                     
                                             中村儀朋著
                                               風媒社
                                           1800円+税

                                                                                                                                                                                                常滑出身の常臥(とこふし)の歌人、山崎礼子さんの魂の記録     
知多郡東浦町に「ひかりのさと、のぞみの家」という身体障害者療護施設があります。「障害がどんなに重くとも、一人の人間として認め合い、社会の一員として尊重される交わりが欲しい。お互いに助け合い、許しあいつつ共に生きる場所が欲しい。」という理念のもとで昭和53年に開設されました。「ひかりのさと、のぞみの家」の運営を支援し、理想に共鳴する人達でつくる「ひかりのさとの会」の会員は現在、全国で1200人余りもいるそうです。その「ひかりのさと、のぞみの家」を昭和61年、NHK名古屋放送局のディレクターであった中村儀朋氏は、取材で訪れました。そしてそこで出会った山崎礼子さんに中村氏は大変驚き、言葉を失ったそうです。彼女は身長130cm、体重30Kg、生まれてまもなく最重度の身体障害を抱え、40歳を過ぎた頃から現在の76歳までベッドに寝たきりのままの月日を送っています。心も知性も多くの人となんら変わりませんが、顔と頭以外、手も足も体のすべてが萎え果てて、生活のすべてを他人に委ねなければ生きられません。その常臥の日々を彼女は6000首余りの短歌を詠みながら、過ごしています。「一体、どのような心でその過酷な運命を受け入れ、その人生を支えているものは、何の力であるのか。」という疑問に、中村氏は彼女の生涯を短歌と共にたどることによって、今年6月に出版されたこの本で答えています。
山崎礼子さんは常滑で生まれ、お母さんが亡くなられた翌年の昭和58年まで約52年間、常滑の実家に住んでいました。この本には、毎月30年も山崎家で開かれていた短歌の会の方々の短歌や山崎家と関わりのあった方のエピソードも掲載されており、常滑の方には、大変ゆかりの深い本だと思います。2005年の中部国際空港開港を控え、今、常滑は大きく変わろうとしていますが、この本には、地場産業が活況であった頃のなつかしい常滑の風土や温もりや人情が感じられます。そして何よりも礼子さんとお母さんの無垢の親子愛には心をうたれ、短歌の友人であり彼女を励まし続けている風見隆吉さんの言葉には、とても深いものがあり、人としてどう生きるべきかを教えられます。私が最近読んだ本のなかで、一番感動した本です。
ひかりのさとファームのホームページです。ぜひ、ご覧になってください。
注文の多い料理店、セロ弾きのゴーシュ他                                                                                                                                                  
                                            宮沢賢治著
                                              講談社
                                           485円+税
秋の夜長に親子で何度も読みたい本                                         
宮沢賢治と半田市出身の新見南吉は今、日本の優れた童話作家として不滅の存在です。しかし、二人とも生きている間は地方の名もない文学者であり、教師でした。結婚することもなく、賢治は37歳で南吉は29歳で病気のために亡くなっています。あくまでも、小川未明、浜田廣介、坪田譲治といった近代童話の主流になりえなかった作家でした。しかし、だからこそ現代と通じる人間観があり、今では、子どもから大人まで人気があるのだと思います。
賢治は、岩手県の厳しい農業環境にあって、自ら農民として生き、人間が自然と一つになることを願い続け、その思いを童話によって表現しようとしました。この「注文の多い料理店」は自費出版で賢治が生前に出した唯一の童話です。動物を平気で殺し、自分の飼い犬でさえ、猟をするための道具にしか考えない都会の紳士に山猫が復讐をするストーリーです。まるで、大量生産、大量消費をして自然を破壊している現代の私達に対する批判とも受け取れる作品だとは思いませんか。
私は賢治の作品の中では「セロ弾きのゴーシュ」が一番、好きです。セロとは、チェロのことでゴーシュは主人公の名前なのですが、フランス語で「へたな」という意味のようです。つまり、へたなチェロ弾きのゴーシュが毎晩、練習をしていると様々な動物がやってきて、その交流を通してチェロが上達していく物語です。動物たちとのほのぼのとしたやり取りが目に浮かぶようで、とても癒され、勇気を与えられる作品だと思います。「生き方上手」の著者の日野原重明氏は、日本音楽療法学会の役職に就いていますが、「宮沢賢治は日本で初めて音楽療法を考えた人だ。」と述べています。それは、この「セロ弾きのゴーシュ」の中に、チェロの音色に誘われて集まってきた動物の「からだじゅうの血のまわりがよくなって病気が治る。」というくだりがあるからだと思われます。

      
   
            
                  
             ここにとりあげたものは、日本語の宝石です。暗誦、朗誦することによって
            こうした日本語の宝石を身体の奥深くに埋め込み、
            生涯にわたって折に触れてその輝きを味わいたいものです。

                                           

              
菅家(かんけ)

此の度は幣もとりあえず手向山

         紅葉の錦神のまにまに

(読み)
このたびはぬさもとりあえずたむけやま
もみじのにしきかみのまにまに 
                  百人一首より                                                          
解説
(意味)
今回の旅は急なことなので幣の用意もできませんでしたが、この美しい紅葉を幣として、ささげますので、神よ御心のままにお受けください。
(作者)
菅家(845〜903)菅原道真のこと。正二位、右大臣。贈太政大臣。当代一の漢学者であったが、和歌にも優れていた。宇多・醍醐両天皇の信任が厚く、重用されたが、901年(延喜元年)に藤原時平に謀られて太宰権師として九州・太宰府に配され、そこで没する。後世に天満天神として祀られる。

              声に出して読み上げてみると、そのリズムやテンポのよさが
            体に染み込んできませんでしたか?また、情景をイメージすることによって、
                    右脳も活性化されたことでしょう。              
 

                                       

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