人はそれぞれ、いろんな本からいろんなものを貰うのです。
小さい頃読んだ本の中で貰ったものは、一生心に残っています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　神沢利子「みんな本を読んで大きくなった」より

おれ　にんげんたち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　岡本武司著 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ナカニシヤ出版 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１.８９０円（税込） 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 黒澤明が感動したようにデウスー・ウザラーに魅かれて　　 この本の著者、岡本武司さんは２０００年に朝日新聞社を退社後、ロシア語習得と沿海地方の先住民の研究をするためにロシアへ渡りました。留学先のウラジオストクで体調をこわし、２００２年５月に治療のために自宅のある常滑市に帰国しましたが、わずか一ヶ月半足らずで急性のがんのために亡くなられました。入院中に病と闘いながらも夫人に口述筆記をしてもらって執筆にあたり、原稿出版の編集はかっての同僚５人にお願いして完成したのがこの本なのです。 知多クリックのスタッフがひょんなことから岡本夫人と知り合い、今年７月に贈られたのがこの本との出合いでした。著者は「人間と自然の秩序が失われた時代」の今こそ、黒澤明監督が映画化したことでも知られるデルスー・ウザラーといういまだに野生のトラやヒョウが住んでいる極東ロシアの先住民の猟師の生涯と、彼に感動しいっしょに探検をしたロシア人の探検記録を伝えたかったのです。デルスーは追尾するトラに向かって「怒るな、すまん。」と語りかけ、トラを退散させることができるのです。彼の人生は徹底した正直さと鳥や獣や森や川や大地への畏敬の念で満ちていました。世界の生きものや自然のすべてが愛すべき「にんげんたち」なのです。彼の生き方は出会った人々を感動させ、美しい魂へと導きます。 おりしも今年日本では、６月から台風がいくつも上陸し、７月には新潟県、福井県で集中豪雨が襲い、東京の真夏日が４０日間連続と最長記録を塗り替えました。異常気象が叫ばれて久しいですが、今年は特に変だとは感じませんか？自然が私たちの生き方に怒っているのでしょうか？私たち日本人はデルスーの生き方から学ぶべきものがたくさんあると思いました。

雨の日のイルカたちは　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　片山恭一著 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　文芸春秋 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１.５００円（税込） 私たちに再生の途はあるのだろうか 片山恭一さんと言えば「世界の中心で、愛をさけぶ」が大ベストセラーとなり、今年５月に映画化され、現在、テレビでも放映され、大変話題となっています。 この本は、著者の最新作で２年前の「９．１１」の事件を機に、深い喪失感を抱えている人々がどのように生きるべきかを模索した作品なのです。「世界の中心で、愛をさけぶ」が純愛小説、泣ける小説という部分だけが強調されてしまい、その反発も多分にあり、この本では著者がずっと小説の中で追求していきたいテーマを強調したそうです。信じられる確かなものがなくなってしまった人々を４篇の作品を通して描いていますが、それぞれの作品が少しずつ、つながっています。それぞれの作品の雰囲気やタッチが少しずつ変わっていて、絵にたとえると、最初が抽象画、２、３篇目が肖像画、最後が風景画であると著者は語っています。ピカソの「漁夫の群れ」がモデルとなった最初の作品は、私にはよく理解できませんでした。しかし、２篇目、３篇目、４篇目と読んでいくうちに、人間が困難な状況のなかでもいかにささやかな希望を見つけて、再生への途を探っていくべきかを教えられます。特に、３篇目の自爆テロであろうとネット自殺であろうと人はいかようにも死ぬことができる。しかし、下の世話を他人の手に委ねて長生きしようとも長生きをすること自体に価値があるという言葉には、とても深いものがあると感じました。

　　　
　 　　　　
　　　　　　　　　 　　　　　　　　
　　　次の４つの絵は、あることわざを意味しています。さあ、あなたには何問わかりますか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

Ａ	Ｂ
Ｃ	Ｄ

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（頭の体操の答え）

Ａ　夢は逆夢　　　　Ｂ　足元に火がつく　　　　Ｃ　藪蛇　　　Ｄ　一寸の虫にも５分の魂